週刊少年ジャンプ「ラブコメ人気作品」の歴史を振り返ってみる
私事ですが、「ラブコメ」が大好きです。
なんというか、現実と空想の狭間にある物語って感じがいいんですよね。
”恋愛”に特有の面白さを残しつつ、”漫画”というメディアによって恋愛特有の面倒くささとかドロドロ感を打ち消してくれているのがもう最高。
ということで歴代のラブコメ(恋愛)漫画作品を振り返っていこうと思っているわけですが、今回はその中でも多くの人にとって身近であろう『週刊少年ジャンプ』に掲載されていたものに絞ってご紹介していきます!
【目次】
きまぐれオレンジ☆ロード
(出典:『きまぐれオレンジ☆ロード』豪華版 1巻表紙)
作品概要
1984年から1987年まで連載(コミックス全18巻)。作者はまつもと泉。
当時のジャンプは「コブラ」「北斗の拳」など硬派な漫画が多く連載されており、恋愛漫画はNG的な風潮がありました。それを一変させ、ジャンプに恋愛漫画が掲載される流れを作ったのは間違いなくこの作品の功績でしょう。
名ヒロイン「鮎川まどか」
やはり恋愛漫画と言えば三角関係ですよね。この作品も例に漏れず「主人公+2人のヒロイン」の分かりやすい構図。
そして今でも語り継がれているのが、そのうちの1人「鮎川まどか(あゆかわまどか)」。
(出典:『きまぐれオレンジ☆ロード』愛蔵版 10巻p233より)
いわゆるツンデレ系です。ついでに元不良です。
ぱっと見取り付く島もない雰囲気を漂わせまくっていますが、実はピュアで優しい子。そりゃみんな好きになるわ。
この子に人生を捧げた少年(今は40〜50歳くらい?)はどれくらいいるんだろうか・・・。
電影少女
(出典:『電影少女』愛蔵版2巻)
作品概要
1989年から1992年まで連載(コミックス全15巻)。作者はお尻大先生こと桂正和。
『きまぐれオレンジ☆ロード』が『うる星やつら』的な作品であるとすれば、こちらは『めぞん一刻』(の終盤)のような作品でしょうか。とにかく重厚。
この作品も三角関係を主軸としていますが、めぞん一刻と同様に「メインヒロインは固定。ライバルヒロインが時期によって変わる」といった構図になっています。この様式は後述する『I"s』にも引き継がれていますね。
とにかく泣ける
色々と過激な描写がある漫画なので、そちらがクローズアップされがちですが、実は読んでみると滅茶苦茶泣けます。登場人物たちがとにかくすれ違いまくるのでほんと切ない。おまけに心情描写が細かくて、ついつい感情移入しちゃいます。序盤・中盤・終盤、隙がない。
基本的にはライバルヒロインとの恋愛描写をメインに進行していく漫画ということもあって、とにかく容赦がないです。バトル漫画でよくある、主人公の戦闘はぬるいけど、脇役の戦闘はアツい的なあれが存分に楽しめます。
筆者的には、ジャンプの恋愛漫画で1番のおすすめ。未読のかたには是非読んで欲しい作品です。
ただし、読んでいるとそこそこ精神的ダメージをくらうので、次の日大事な用事がある場合は控えたほうがいいかも。
I"s
(出典:『I"s』文庫版 9巻表紙)
作品概要
1997年から2000年まで連載(コミックス全15巻)。作者はお尻大先生こと桂正和。
『電影少女』に比べるとマイルドで、気軽に読める作品になっています。より昨今のハーレム系漫画に近いといった感じ。でも電影少女に引き続き恋愛描写は濃い目。
三角関係が主軸ですが、ライバルヒロインが時期によって変わっていきます。『電影少女』と同じ構図ですね。尚、こちらはメインヒロインとの恋愛を中心に物語が進んでいきます。
終盤の蛇足感が玉に瑕。
魅力的なヒロイン
もうね、とにかくI"sには捨てヒロインがいないんですよ。キャラが全員魅力的。
ええ、ここまで言ったからには全員紹介しちゃいますよ。
まずはメインヒロインの葦月伊織(よしづきいおり)。
(出典:『I"s』3巻p22)
まず葦月伊織って名前が既にかわいいですよね。で、絵を見てもらったら分かるように王道中の王道中の王道の正統派美少女。清楚可憐茶目っ気ありと三拍子揃った誰もが好きになるであろう性格。しかも現役アイドル。どんだけ人気要素詰め込むんや。
そしてお次は秋葉いつき(あきばいつき)。
(出典:『I"s』6巻p110)
ザ・元気っ娘。見た目も中身も電影少女のメインヒロイン「天野あい」とそっくり。
天真爛漫で何も考えていないように見えて、実は誰よりも優しく、誰よりも主人公を気遣っている健気な子。しかも幼馴染で、幼い頃から一途に主人公のことを想っている。こちらも人気要素詰め込みまくり。
続いてはみんな大好き磯崎泉(いそざきいずみ)。
(出典:『I"s』9巻とびら絵コレクション)
小悪魔後輩賢い系少女。 主人公にアプローチかけまくりの押せ押せガール。『AKB49〜恋愛禁止条例〜』の「有栖莉空」っぽいと言えば分かる人には分かるかな?
この手の女の子いいですよね。現実にいたら多分嫌いになると思いますけど、漫画だからOK。
第113話は伝説。よい子は検索しちゃだめよ。
最後は麻生藍子(あそうあいこ)。
(出典:『I"s』14巻p19)
蛇足と言われている終盤に登場したヒロインなので、ちょっと影が薄いですが、自分は結構好きです。
おしとやか大人ドジっ娘というこりゃまた色々な要素詰め込みまくり。しかもそれがやり過ぎではないのがいい塩梅。結婚したらいい奥さんになれそうなタイプです。
もう少し活躍の機会があれば・・・。
というわけで全ヒロイン紹介でした。本当に全員キャラが被っていない&魅力的なんですよね。キャラ設定の見本市ですよ、ほんと。
『I"s』は読んでいて明るくなれるので、電影少女を読んだあとはI"sにはしごするのがおすすめ。
いちご100%
(出典:『いちご100%』19巻表紙)
作品概要
2002年から2005年まで連載(コミックス全19巻)。作者は桃栗みかんこと河下水希。
こちらは上に挙げた作品に比べるとハーレム色が強くなっています。登場する女性の半分程度が主人公のことが好き。以降の作品を考えると、この辺りで「主人公とヒロインの一対一の恋愛」から「登場人物みんなが主人公のことを好き」に移り変わったのかな。まさに転換期といったところ。
2017年4月より続編の連載が開始。こちらは賛否両論。
東西ヒロイン問題
とにかくこの漫画を語る上で外せないのは「メインヒロインは誰なのか」問題ですよ。
ネタバレになるので詳述はしませんが、主人公があっちへフラフラこっちへフラフラ、作者の描写もあっちへフラフラこっちへフラフラで、結局メインヒロインが誰なのかがよく分からないという。Wヒロインってことでいいんでしょうか。
主人公が優柔不断な漫画の代表格。
南にもっと活躍して欲しかったな・・・。
To LOVEる -とらぶる-
(出典:『To LOVEる -とらぶる-』1巻p3-4)
作品概要
2006年から2009年まで連載(コミックス全18巻)。原作は長谷見沙貴、作画は矢吹健太朗。
アニメ、ゲームと言ったメディアミックス、連載終了後にスピンオフの掲載と幅広い展開を見せた大ヒット作品です。
とにかくお色気。なにがあろうとブレずにお色気。コミックスの加筆修正も有名。というかこれのおかげで売れたといっても過言ではない。
いつの間にかハーレム
割りと初期の頃は純粋に三角関係の漫画やってた気がするんですけど、いつの間にか「ハーレム漫画の代表格」に登りつめてました。
それと同時に視点の変更が起きているんですよね。
初期の頃は主人公の1人称視点で書かれていることがほとんどで、ヒロインの心情などは極稀に描かれる程度でした。それが連載1周年を過ぎたあたりでヒロイン視点の話が徐々に増え、実質続編のスピンオフではほぼヒロイン側の視点で物語が展開していきます。
主人公が対象として描かれるようになったということが、ハーレム漫画化への伏線だったのかもしれません。
ニセコイ
(出典:『ニセコイ』1巻表紙)
作品概要
2011年から2016年まで連載(コミックス全25巻)。作者は古味直志。
近年のラブコメで最大のヒットを飛ばしたのが本作。アニメにゲーム、スピンオフの掲載とこちらも様々なメディア展開を見せています。
『To LOVEる』ほどハーレム色は強くないものの、やっぱり「登場人物の多くが主人公のことを好き」という傾向は引き継いでいます。基本的には三角関係が主軸。
ツッコミどころの多い作品としても有名。
原点回帰の王道ラブコメ
最近の少年ラブコメ漫画にしては珍しく、余計な味付けなしの純粋なラブコメです。その王道さが受けたのか、連載期間はそれまでの最長記録だった『いちご100%』を抜き現在1位。
ラブコメがヒットしにくいジャンプでこの連載期間は凄いですよね。
手を繋いで戦う
ついでに『ダブルアーツ』の話をします。
途中まではセンターカラー貰えたり、表紙まで貰えちゃったりしてて
「あ、これ長続きしそうだな」
って思ってたんですよ。
でも、そこからいきなりの急降下。まさか同時期に連載が始まった『ぬらりひょんの孫』より早く終わるとは思ってもいませんでした。
話がいきなりつまらなくなったわけではないし、なんであんなに人気が急落したのかは未だに謎です。
ラブコメを読もう
というわけでジャンプの人気ラブコメ作品を振り返ってみました。
絵も話も時代とともに、リアル傾向からデフォルメ傾向に大きく変化していますね。これからはどういう方向に進んでいくのか楽しみ。
ジャンプに限らず、「ラブコメ」ってやっぱりいいものです。特に一昔前の作品は、最近の漫画にはない面白さがあっていいですよね。携帯電話のない時代だからこそのすれ違い最高。
もし読んだことのない作品があれば、この機会に是非読んでみてください。
特に『電影少女』。少年漫画だからと言って侮ることなかれ。