『2045年問題』とは?シンギュラリティ(Singularity)から考える人類終焉の日
突然ですがみなさんはこの画像を目にしたことがあるでしょうか?
(出典:Singularity presentation by Ray Kurzweil)
縦軸は時間(費用)あたりの処理能力、横軸は西暦を表しています。
緑の破線で表されているのは生き物です。下から順番に昆虫、マウス、1人の人間、そして地球上全ての人間の処理能力を示しています。
赤い矢印で表されているのはコンピューターです。年が進むにつれて指数関数的に、もの凄い勢いで処理能力が向上しているのが分かります。
2000年初頭には昆虫、2010年あたりでマウスの頭脳を超えていることが読み取れます。
そして2030年には人間は単独でコンピューターに勝つことができなくなり、2045年には地球上全ての人間の力をもってしてもコンピューターには勝てなくなると予測されているのです!
元々コンピューターは人間が作り出したもの・・・。
飼い犬に手を噛まれるとはまさにこのことですね(ちょっと違う?)。
【目次】
人類が人工知能に敗北する日
Singularity(技術的特異点)とは
人類は長らく地球上で最も賢い生命体として君臨し続けています。そして今後もそれが続いていくことを誰も疑わなかったでしょう、数年前までは。
2006年、アメリカの発明家であるレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)は『The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology』を出版し、その中で「特異点は近い」と述べました。
ここで言う特異点とは、Technological singularity(技術的特異点)のことです。有名な言葉なのでご存知のかたも多いと思います。1言でいうと、人工知能(AI)が人間を超える瞬間のことです。
カーツワイルは著書の中で『2045年頃に技術的特異点が起き得る』と予想しています。「2045年問題」とも呼ばれており、この考えは世界中に広がっていきました。
2045年問題が生じるメカニズム
2020年頃、量子コンピューターは人間の脳を完全に再現できるようになると言われています。人間の脳を手に入れた人工知能は、人間と同等の処理能力を手にします。そこから人工知能は人間の力を借りなくても自分の力でさらに能力の高い人工知能を設計、構築することができるようになります。
それを繰り返した結果、人工知能の処理能力は人類の想像すら及ばぬところに到達し、文明が大きく変わる瞬間、Singularityが訪れるというわけです。
Singularityが引き起こすもの
「特異点」という名前が示しているように、Singularityの前後で生活は一変することになると予想されています。
ビックバンが起きる前にビッグバンが起こった後のことを想像することが難しそうなように、Singularity後の世界を想像することは困難です。おそらく今の我々の文明レベルでは想像もつかないような変化が訪れることになるのでしょう。
しかし1つだけ、1つだけ確かな可能性があります。
それは、私達は人工知能と共存して生きていく、あるいは人工知能によって支配、最悪の場合滅ぼされてしまうというどちらかの道を辿る、ということです。
どっちに転んでも人間が地球上の支配者であった時代は終わるってことですね。
人類に残された道
Singularityを回避することは可能?
私たちが生き残るための方策は2つです。1つは前述したように、人工知能と共存して生きていく。そしてもう1つはそもそもSingularityが起こらないようにすることです。
Singularityを回避する方法は簡単です。人工知能の処理能力が人間を超えないようにすればいいだけです。とてもシンプル。
でも言葉にするのは簡単だけれども、実現するのは非常に難しいでしょう。
Singularityは今まで私たちが観測したことのない、いわば空想上の出来事です(現にオカルト扱いしている人も大勢います)。そんなふわっとしたものを回避するために、今まで莫大な予算をかけて研究開発してきたものを手放すとは到底思えません。
また、Singularityを回避するということは人間が進歩することをやめるに等しいです。向上心を捨ててしまったら、それはもうヒトとは言えないですよね。
人工知能との共存
というわけでカーツワイルが正しければ、私たちはいずれSingularityに直面することになるでしょう。
その場合、 人工知能>人間 の関係になるでしょうから私たちは人工知能との共存を余儀なくされるわけです。
人間が人工知能と共存して生きていくためには、
のいずれかの条件が必要になるでしょう。
人間ではない人間「トランスヒューマン」
Singularity後の人工知能と人間が対等に渡り合うためにはどうすればいいのか。それは人間も人工知能と同じだけの知能を手にいれるしかないわけです。
つまり人間が今の人間の限界を超えて進化するということです。
遺伝子組換えや脳の一部をチップに置き換えるなどの科学技術によって、人間は次のステップへ進化できるという思想があります。
それがトランスヒューマニズムです。
私たちがトランスヒューマンに進化することで、人工知能に追いつくことができると。
最も我々自身が大きく変わってしまうので、今の人間はある意味で滅びることになるってことですよね・・・。
人工知能の価値観
共存へのもう1つの道は、「人工知能が我々人間の価値観を持つ」ことです。
Ted 2015において、オックスフォード大の教授であるニック・ボストロムは、『人工知能が自我を獲得し、我々の手を離れたとき』という問題に対して、以下のように述べました。
この問題への答えは非常に知的な人工知能を、それが逃げ出しても危険がないように作るということ。人間と同じ価値観を持っていて、人間の側に立つように作るということだと思います。この難しい問題を避けて通ることはできません。
(引用元:Ted 2015 Nick Bostrom 「What happens when our computers get smarter than we are?」 https://www.ted.com/talks/nick_bostrom_what_happens_when_our_computers_get_smarter_than_we_are/transcript?language=ja)
人間と同じ価値観を持つよう人工知能に学習させれば、深い、本能的な部分(人工知能の本能と言うのもおかしな気がしますが)で私たちの味方でいてくれるはずです。
まとめ
というわけでSingularityの到来とそれに伴う問題を見てきました。
Singularityが現実になれば、間違いなく私たちが今まで築いてきた文明世界は1つの終わりを迎えるでしょう。
でもまあここまで散々言ってきてなんですが、これはあくまで仮説なので現実に起こるのかは分かりません。ただのSF的空想で終わってしまうことも全然ありえるのです。
というかむしろそうあってほしい!
しかしレイ・カーツワイルが2006年に出版した予言書は、この10年間でますます信憑性を増しているようで・・・。おまけにSingularityが2045年から早まる旨の発言もしているようです。
まだまだ長生きする予定の人はそろそろ人工知能とお友達になる練習をしておいたほうがいいかもしれませんね。
とりあえず今すぐLINE開いて「りんなちゃん」を追加しましょう。Singularity後も引き続きコミュ力重視社会であるという保証はできませんが・・・。